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カルチャーモデル
最高の組織文化のつくり方
2020/08/28
唐澤 俊輔
1
カ ルチャ ーモデル
最高の組織文化のつく り 方
20 2 0/08 /2 8
唐澤 俊輔
1
これは何か?
• 『カルチャーモデル 最高の組織文化のつくり方』が2020.8.28に出版
• 著者自身が、講演用に本の概要をスライドにまとめたもの
• 具体的な活用事例などの詳細は、本をぜひお読みください!
• Amazonこちら↓
https://www.amazon.co.jp/dp/4799326686/
2
自己紹介 唐澤 俊輔
2005年 日本マクドナルド 入社
2011年 28歳で史上最年少部長
2015年 社長室長として変革を主導
2016年 マーケティング部長としてV字回復
2017年 メルカリ社長室へ
2018年 執行役員VP of People & Culture 兼 社長室長
2019年 SHOWROOM COOに
現在 Almoha LLCをCOOとして共同創業
グロービス経営大学院 客員准教授
3
抱えていた問題意識
4
カルチャーへの課題意識
• 素晴らしい経歴で、頭もキレる超優秀な社員が入ってきた! しかし、いろい
ろ手を出したものの大きな成果にならず、すぐに退職してしまった。
• 新卒社員が夢を抱いて入社してきた! しかし、入社数カ月経てば夢を語るこ
とはなくなり、目の前の作業をこなす日々。そのうち退職していた。
• 社長が入れ替わり、組織風土改革が始まった! しかし、これまでの功労者が
抵抗。改革もうまくいかず、功労者も退職してゆく。
「人を大切にしている」と、
どの会社も謳ってるのになぜ起こるのだろう?
5
期待値ギャップが不幸を招く
成果主義でプロフェッ
ショナルな会社ですよ!
ビシビシ仕事
して成長でき
そう!
しっかり育成
されてプロに
なれそう!
人事担当者
採用候補者A
採用候補者B
6
期待値ギャップが不幸を招く
とにかく早いところ
成果を出してくれたまえ
成果に向けて
ガムシャラに
やるぜ!
あれ?
育成してくれ
ないのかな?
所属部門の上司
新入社員A
新入社員B
7
期待値ギャップが不幸を招く
おいおい、なぜまだ成果
が出せないのだ??
なにくそー
やってやる
ぜ!
教えてくれな
いのに、厳し
すぎる・・・
所属部門の上司
新入社員A
新入社員B
8
期待値ギャップが不幸を招く
会社は同じことを伝えていても、
受け手の期待値によって、捉え方
は大きく変わる
このギャップが、社員のモチベー
ションや成果を左右する
9
経験してきた組織の違い
10
組織規模、事業モデル、経営者の特性・・・ 全く異なるタイプの企業を経験。
組織カルチャーはそれぞれ異なるものの、いずれも組織的な強みがあると感じた。
『カルチャーモデル』が目指したこと
カルチャーとは目に見えない空気のような存在と言われる。
しかし、目に見えないままでは、期待値ギャップによる不幸はなくならない。
カルチャーを可視化できれば、こうしたギャップはなくなるのではないか。
カルチャーを設計し、言語化し、組織に浸透するにはどうしたらよいのだろうか。
この難題に挑戦するのが、本書『カルチャーモデル』である。
11
本書の構成
12
0章 なぜカルチャーが重要になるのか
1章 カルチャーとは何か
2章 どういったカルチャーをつくるべきか
3章 カルチャーモデルをつくる
4章 いかにカルチャーを言語化するか
5章 カルチャーの浸透のさせ方
6章 これからの経営とカルチャー
カルチャーの重要性
13
カルチャーにより成功してきた企業
Netflixは「カルチャーデッキ」と呼ぶ125枚に渡るスライドを公開
「シリコンバレーから生まれた最高のドキュメント」と言われる
14
Slideshareより https://www.slideshare.net/reed2001/culture-1798664
「Freedom & Responsibility (自由と責任)」
という言葉に代表される強力なカルチャーが、
Netflixのビジネスの成長を推進したと言われる
カルチャーにより成功してきた企業
GAFAはそれぞれ、自社のカルチャーを独自に定義したり、
それを公開したりし、企業としての競争力にしている。
15
カルチャーにより成功してきた企業
実際に、AppleはSteve Jobsが退任した後も業績を伸ばし続けている。
カルチャーが浸透していたことでカリスマ退任後も混乱しなかったと言われる。
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2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019
利益(億ドル)売上(億ドル) Apple 売上・利益推移
売上高
AppleのIR情報をもとに筆者が作成
一方で、カルチャーは足かせにもなり得る
カルチャーは意図せずとも、結果
として組織に出来上がってゆく
気づけば意図しないカルチャーが
つくられ、想定外のリスクを抱え
ることも
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東洋経済オンラインより https://toyokeizai.net/articles/-/78801
カルチャーがブランドイメージを決める
ブランドイメージは、ビジネスだけ
でなく組織カルチャーからも伝播し
て形づくられる
顧客のイメージを適切につくれば、
ギャップが生まれることはない
そして、期待値ギャップに起因す
る、採用後の不幸は生まれなくなる
18『カルチャーモデル』P34の図より
カルチャーは、ビジネスにどう効いてくるか?
意思決定で迷わない、その後の実行でぶれない
→ビジネスのスピードを圧倒的に高める!
規則ではなく「価値観」なので、解釈し議論する余地がある
→自ら考え行動できる強い組織が育つ!!
対外的に発信することでブランディングができる
→フィットした人材の採用や、良い外部パートナーが見つかる!!!
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理論編
カルチャーモデルとは何か
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カルチャーはどのように生み出されるのか
ビジョン・ミッション・バリューにより
組織としての方向性が規定される。
働く一人ひとりの日々の行動や言動が
積み重なって、結果としてカルチャーは
生み出される。
21『カルチャーモデル』P78の図より
事業と組織は両輪
経営資源は、ヒト・モノ・カネ。
ヒト=組織、モノ=事業が両輪となり
カネ=資金を生むサイクルを回す。
事業と組織が両輪として機能しながら、
ビジョン・ミッションを達成してゆく。
事業とはビジネス、組織とはカルチャー。
カルチャーはビジネスの両輪として重要。
22『カルチャーモデル』P87の図より
企業活動の全体像とカルチャーモデル
ビジネスモデルの対になるものとして、
「カルチャーモデル」を設計する。
「ピープルマネジメント」を通じて、
日々の行動や言動に落とし込まれ、
カルチャーは定着してゆく。
結果、EXが向上し、それがCXに貢献、顧
客を獲得しミッション達成に寄与する。
23『カルチャーモデル』P107の図より
カルチャーモデルとは?
マッキンゼーの7Sをベースに、
筆者が作成したフレームワーク
まず「Stance」で、どういった方
向性のカルチャーにするか、経
営スタンスを明示する
「Shared Value」を中心に、
全てのSを整合させつつ言語化し、
カルチャーの可視化を図る
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マッキンゼーの7Sで
はStrategyだが、
ここでは「Stance」
『カルチャーモデル』P99の図より
経営スタンスの4象限
中央集権型か?分散型か?
変化志向か?安定志向か?
という問いから経営スタンスを選択
どれが良いといった正解はない
経営としての好き嫌いを決めるもの
ここで決めたスタンスによって、
カルチャーの方向性が決定する
25『カルチャーモデル』P133の図より
実践編
カルチャーのつくり方
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カルチャーをつくるステップ
カルチャーのつくり方を、5つのステップのもと事例と共に紹介します
(1) 現状のカルチャーを棚卸する
(2) ビジョン・ミッションを設定する
(3) カルチャーの方向性を決める
(4) カルチャーを言語化する
(5) カルチャーを浸透させる
27
(1)現状のカルチャーを棚卸する
カルチャーモデルの7Sに沿ってそれぞれ言語化してゆく
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7S 説明 問いの例
Stance 組織としてのあり方 安定的な成長を求めるか?激しく変化しながら成長するか?
Shared Value 行動指針
バリュ、ウェイ、クレド、行動指針、スローガン、社訓、大切に
する価値観、など言語化されたものはあるか?
Structure 組織の構造・形態 ヒエラルキーを重視するか?フラットな組織か?
System 制度
評価制度はどういった特徴があるか?
(年功序列、減点主義、成果主義、行動評価、など)
Staff 人の採用や育成
人材の採用基準は?
新卒と中途はどちらが中心か?
Skill 組織としてのスキル、強み 特に強い部門や、業界内でも専門性の高い組織はあるか?
Style 組織風土
意思決定はどのように行う傾向か?
(トップダウン、ボトムアップ、合議で、など)
(2)ビジョン・ミッションを設定する
「どんな社会にしたいのか?(ありたい姿)」
「その中で自社は何を担うのか?(会社の使命)」を決めていきます。
誰でも言える総花的なものではなくて、「この会社だからこそ言えるこ
と」を探り、心の底から実現したいと思えるものを探しましょう。
(SHOWROOMの例)
より不変のものを上位概念とし、当面のドメインとして「エンタメテック」領域でミッションを実現
していくのだと、定義しています。
29SHOWROOMホームページより https://showroom.co.jp/
(3)カルチャーの方向性を決める
4象限をベースに、自社が目指すカルチャーの方向性を決定する
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中央集権型
分散型
変化
志向
安定
志向
カリスマリーダー経営
カリスマ経営者が、強烈に変化を起こしながら
トップダウンで大胆に意思決定をして推進していく
(カリスマ創業者系の会社に多い)
ソフトバンク、ファーストリテイリング、
Facebook、SHOWROOM など
チームリーダー経営
経営陣がチームの力を結集して意思決定してゆく
リスクを抑えた安定した経営を志向する
(日本の大企業に多い)
NTT、都銀各行、
花王、ニトリ など
複数リーダー経営
事業や地域別に組織を分け責任者に権限を委譲
リーダーシップ層を多く育成し安定して成長する
(外資グローバル企業に多い)
P&G、GE、J&J、
マクドナルド など
全員リーダー経営
社員一人ひとりに自立性を求めて、大胆に任せる
多様性の価値を発揮し変化しながら成長する
ITスタートアップに多い
Google、airbnb、
メルカリ など
(4)カルチャーを言語化する
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バリューを中心に、様々な施策を言語化し7Sの整合性をとってゆく
Stance
選択する経営スタンス
Shared Value
行動指針
Style
組織風土
Structure
組織構造や形態
Skill
組織としてのスキル、強み
System
人事制度など
Staff
採用や育成
(4)カルチャーを言語化する ーマクドナルドの事例
全本社スタッフ参加型のワークショップを
行い、ボトムアップでバリューを言語化
策定したステップ
1)組織課題をワークショップで出し合う
2)課題に投票して優先順位をつける
3)課題を「取るべき行動」に置き換える
4)使いやすい言葉に落とし込む
5)経営陣と合意し、全社に発表
32
グロービス知見録の取材記事より https://globis.jp/article/4623
(4)カルチャーを言語化する ーマクドナルドの事例
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2015年の経営再建当時の施策を7Sで改めて整理(バリューは本社限定)
Stance
複数リーダー経営
Shared Value
・Be Customer
・Go Gemba
・Work Together
・Act First
Style
・組織風土改革プロジェクト
・Fun & Smile!
Structure
・ピラミッド型の組織
・3地区に分けた地域別組織
・地区本部長に権限委譲
Skill
・リーダーシップスキル重視
・現場理解の高さが強み
System
・業績連動インセンティブ導入
・リーダーシップ評価
Staff
・新卒&中途のハイブリッド
・変革を主導する人材の登用
・女性店長などダイバーシティ
(4)カルチャーを言語化する ーメルカリの事例
創業期からあったGo Bold, All for One, Be a Proのバリューに加え、
「Trust & Openness」という言葉でカルチャーを定義した。
メルカリではそれを「カルチャードック」という文書にまとめ、メルカリ
らしい人材像や、働き方、評価や報酬などについて全て言語化した。
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メルカリホームページより https://careers.mercari.com/jp/culture/
(4)カルチャーを言語化する ーメルカリの事例
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当時、カルチャードックにまとめた内容を7Sで整理し直してみる
Stance
全員リーダー経営
Shared Value
・Go Bold
・All for One
・Be a Pro
Style
・Trust & Openness
Structure
・バーチャルホールディングス
・事業責任者に権限委譲
・できるだけ階層を減らす
Skill
・自律的に動き判断する組織
・業界トップクラスの専門性
System
・絶対評価で報酬を決める
・株式報酬を全社員に付与
Staff
・ジョブ型の採用
・マネジメント職とスペシャリ
スト職の両方のキャリアパス
(5)浸透
カルチャーは浸透し、日々の行動・言動に落とし込まれていなければ、カル
チャーモデルを設計してもそれは絵に描いた餅。
ここでは、マーケティングの大家フィリップ・コトラーが提唱している「5A」
のフレームワークを応用し、5つのステップで浸透させていく。
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(5)浸透 ー認知(Aware)
浸透させたいものを可視化し、目に触れるように設計する
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メルカリの社員用ノベルティ SHOWROOMのエントランス
カセットテープでSHOWROOMのロゴを作り、
デジタルとアナログの融合を伝える
メルカンより https://mercan.mercari.com/articles/2017-04-11-190000/
メルカンより https://mercan.mercari.com/articles/16889/
SHOWROOMオフィスのエントランス写真
(5)浸透 ー訴求(Appeal)
理解を深め、共感・好感を得て、共通認識を醸成してゆく
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「EXジャーニー」にカルチャーを組み込む
採用から退職までに至るあらゆるタッチポイントで
一貫してカルチャーを伝え続ける
Sick Leave(有給休暇と別の傷病休暇)
Trust & Opennessのカルチャーに則って、診断書などの証
明書を不要とした。
メルカリプレスリリースよりhttps://about.mercari.com/press/news/articles/20190701_sickleave_relaxdays/
ココの一例
(5)浸透 ー調査(Ask)
従業員や求職者が、自ら調べたり、話を聞いたりできる環境を整える
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オウンドメディア ーメルカンの例
メルカリの「人」についてオープンに公開。
いろいろなタグから検索できるようになっている。
talentbook (PR table) ーSHOWROOM活用例
社員一人ひとりを主役にし、社内報とオウンドメディア
の両方の役割を担うコンテンツプラットフォーム
メルカンより https://mercan.mercari.com/about-mercan/
TalentbookのSHOWROOMページより https://www.talent-book.jp/showroom
(5)浸透 ー行動(Act)
一人ひとりの日々の行動や言動に落とし込み、カルチャーを体現してゆく
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評価や表彰などに落とし込む ーメルカリの例
「バリューの体現度合い」を人事評価に用いることに
加え、体現した人をValue賞として表彰する。
行動を奨励するとともに周囲の理解も深める効果。
Unipos ーメルカリ活用例
社員同士が感謝の言葉とともにピアボーナスを送り合え
るプラットフォーム。バリューに沿った行動が取られる
と送り合うなどすることで新王に貢献する。
Seleck記事より https://seleck.cc/1167
メルカンより https://mercan.mercari.com/articles/183000-2/
(5)浸透 ー推奨(Advocate)
カルチャーを発信し広めると共に、度合いを把握し改善サイクルを回す
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推奨する機会を作る ーメルカリの例
SNSなどでの発信を奨励することに加え、リファラル
採用を強化し自社を推奨する機会を意図的に作る
組織サーベイ ーモチベーションクラウドの例
e-NPSやエンゲージメントをスコア化することで、
「自社を推奨したいと思う度合い」を把握し改善につなげる
モチベーションクラウドのサイトより
https://www.motivation-cloud.com/service/
Potentialight’s way記事より https://amebaownd2.potentialight.co/posts/7591156/
さいごに
「よりよい会社にしたい」「もっと楽しく働きたい」
その変化を生み出すのは一人ひとりです。
明日から、どんな小さなことでもいいので、
何か一つでも新たな行動を起こしてみてください。
「うちの会社は最高の組織文化だ」と
胸を張って言える方で溢れた日本になる日が来ることを
心から祈っています。
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