「犯罪者みたいな顔」「存在が粗大ごみ」

SNSに投稿された、いくつもの誹謗中傷。

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サッカーJ1リーグ、FC町田ゼルビアの監督や選手などに対して向けられた言葉です。

昨シーズンJ2リーグで優勝し、今シーズンからJ1リーグに戦いの場を移した町田ゼルビア。現在リーグ3位で、昇格1年目から優勝争いを演じています。

そんな好調な成績とは裏腹に増え続ける誹謗中傷。
10月15日、FC町田ゼルビアの代理人が向かったのは、東京地検特捜部でした。

ゼルビア顧問弁護士 加藤博太郎弁護士:
本日、東京地方検察庁に対して、名誉毀損罪及び信用毀損罪での罪に該当するものとして刑事告訴を行いました。

悪質な誹謗中傷をした複数の投稿者を刑事告訴したというのです。
事態を把握するため、クラブは10月6日に情報提供窓口を設置。明らかになったのは…。

ゼルビア顧問弁護士 加藤博太郎弁護士:
あたかもFC町田ゼルビアのスタッフ、選手、あるいは監督、チームがそういった犯罪者であるかのような書き込みというものが多数行われており、ひどい時は1000件以上もの書き込みが行われて、エスカレーションしている状況。

批判が過激化…オーナーであるサイバーエージェント藤田晋社長「もう限界」

なぜこれほどまでにFC町田ゼルビアに対する誹謗中傷が相次ぐのでしょうか?
サッカーファンに話を聞きました。

サッカーファンの男性:
サッカーって対人なのでラフプレーがちょっと出るのは仕方ないですけど、友達のFC東京のファンからもゼルビアはちょっとプレーが怖いと聞くので。
よく言われてるのは勝ちにこだわるスタイルですね。それで実際今年からJ1上がってきて。

サッカーファンの女性:
Jリーグに新しい風を起こしてくれた気持ちでおったから、出るところは打たれるんやなって。

その誹謗中傷の矛先の1人が、黒田剛監督です。

2022まで高校サッカーの強豪、青森山田高校の監督を務め、2023年、FC町田ゼルビアの監督に異例の転身。すると、わずか1年でクラブをJ2 リーグ優勝、J1リーグ昇格へと導きました。

これまで、ルール上に規定のない行動がたびたび注目されてきた町田ゼルビア。
その1つが高校サッカーでは見かけるものの、プロではあまり見ることのない、ロングスローを多用するプレー。
さらに、これもルール違反ではないものの…PKを獲得した選手が、蹴る前にボールにたっぷりと水をかけることも。

こうした勝つ可能性を上げるための行為に対し批判が相次ぎ、投稿の一部が過激化。監督や選手、スタッフまで批判するものもあったということです。
中にはサッカーと関係のない誹謗中傷も…。

ゼルビア顧問弁護士 加藤博太郎弁護士:
選手の家族のインスタグラムに誹謗中傷の投稿を送ってきたりとか、非常にいろんな方々の心をむしばんでいる。

FC町田ゼルビアのオーナーを務めるサイバーエージェントの藤田晋社長はこうコメントしています。

藤田晋社長のコメント:
昨年来、クラブの好調な成績と比例するように無数の誹謗中傷を浴びており、それはもう酷いものでしたが、これまでは新参者への洗礼かと目を瞑ってきました。
しかしながら、もう限界です。既に多大な実害、実損が出ておりこれ以上はもう看過しないことを決意しました。完全に度が過ぎており、これはいじめの構図と同じです。

クラブは今後も情報提供などに基づいて、誹謗中傷に対する刑事告訴を進めていく方針です。

「批判」と「誹謗中傷」…罪に問われる境目とは?

「めざまし8」では、若狭勝弁護士に誹謗中傷の境界線について解説してもらいました。

若狭勝弁護士
若狭勝弁護士

MC 谷原章介:
今回、投稿者に実刑が下る可能性もあるのでしょうか?

若狭勝弁護士:
実刑に至る可能性はかなり少ないと思います。刑事手続きというのは段階を踏んでいくので、何か罪を犯したとしても最初は起訴猶予といって「今回に限り勘弁してあげる、罰金にもしない」という。次に同じようなことをやったら次は罰金。罰金でもまた同じようなことをやったら今度は懲役刑の裁判にかけるけど執行猶予がつくと。それでもまた同じようなことをやったら裁判にかけられて今度は実刑と。
このようにステップを踏んでいくというのが今までのやり方なので、その意味においては、かなり被害者を傷つけるようなことがあったとしても、いきなり1回の初犯で実刑になる可能性は極めて低いと思います。

では、罪になる・ならないの境界線はどこにあるのでしょうか?

①ミスをした選手に…「最悪なプレー。二度と○○を使うな!」

MC 谷原章介:
具体的に監督の名前が言及されていないし、使う・使わないというのは個人の人格をそこまで否定している感じでもないので、ギリギリセーフかなと思います。
若狭勝弁護士:
正解です。このSNS投稿は罪にならない可能性。誹謗中傷ということと、他方に論評とか意見というのがあって、この間はくっきりと分かれることはできないんですが、基本的には意見、その人の感覚、論評というような位置づけだと名誉毀損にはならないという立て付けはあります。

②ミスをした選手に…「この三流選手が!!もう選手辞めろ!!」

矢沢心氏:
こんなことSNSに投稿してほしくないです。だけど、結局は論評とかで名誉毀損にならないっていうんだったらそうではないのかな…。
フジテレビ解説委員 風間晋氏:
「辞めろ」ですからね。会社で上司が部下に「辞めろ」って言ってパワハラみたいなことになるのと似たような状況じゃないのかなと僕は思います。
若狭勝弁護士:
これは名誉毀損にあたる可能性があります。前提として「三流選手」というのがその人の評判を落とす可能性があるので。客観的には普通はしっかりとした選手であるにも関わらずそれを「三流選手」という形で決めてかかって言うというのは名誉毀損になり得る。

③ミスをした選手に…「全部○○のせい!!きょうから夜道に気をつけろ」

小室瑛莉子キャスター:
これは脅迫ですよね。
若狭勝弁護士:
その通りです。脅迫罪にあたる可能性があります。「脅迫罪」というのは、害とか悪を告げるときに成り立ち得る犯罪なんです。「夜道に気をつけろ」というのは不吉なことが自分に降りかかってくるんじゃないかということを印象づけるような話になるので、そういう意味では脅迫罪になり得ると思います。

MC 谷原章介:
例えば、好きなチームが負けたら一緒に観戦しに行った仲間と居酒屋でぐだぐだ愚痴ったりするじゃないですか。そこまではよしとしても、それを公的なSNSに書くことはNGということですよね?
若狭勝弁護士:
そうです。名誉毀損が成立するというのは“公然と”という要件があります。公然とは、不特定多数に向けて言うということですから、仲間内で言うような場合は、公然性というのはそれほど満たされていないので名誉毀損にはなりませんが、SNSというのは公然性としてはすごいものがありますから、そこで言うと名誉毀損あるいは脅迫罪になり得ます。
(「めざまし8」10月16日放送より)