洞爺湖
洞爺湖(とうやこ)は、北海道虻田郡洞爺湖町と有珠郡壮瞥町にまたがる湖。二級河川長流川水系に属する。周辺が支笏洞爺国立公園に指定されており[2]、洞爺湖有珠山ジオパークとして『日本ジオパーク』『世界ジオパーク』に登録されている[3]。また、「日本百景」「新日本旅行地100選」「美しい日本の歩きたくなるみち500選」にも選定されている[4][5]。
洞爺湖 | |
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ザ・ウィンザーホテル洞爺リゾート&スパから臨む洞爺湖(2013年9月) | |
所在地 |
北海道(胆振総合振興局) |
面積 | 70.72[1] km2 |
周囲長 | 50 km |
最大水深 | 180.0 m |
平均水深 | 117.0 m |
貯水量 | 8.19 km3 |
水面の標高 | 84 m |
成因 | カルデラ湖 |
淡水・汽水 | 淡水 |
湖沼型 | 貧栄養湖 |
透明度 | 10.0 m |
プロジェクト 地形 |
地理
編集北海道南西部に位置し、「洞爺カルデラ」内にできた湖[6]。面積は日本で9番目、カルデラ湖としては屈斜路湖、支笏湖に次いで日本で3番目の大きさである。
東西約11キロメートル、南北約9キロメートルのほぼ円形の湖で、有珠山・昭和新山・洞爺湖温泉などがあり北海道有数の観光地域となっている。湖畔の南側を北海道道2号洞爺湖登別線、北西部を北海道道578号洞爺虻田線、東側を北海道道132号洞爺公園洞爺線が通っており、湖畔を一周することができる。
中央に浮かぶ「中島」(面積 4.85平方キロメートル)の最高点トーノシケヌプリ(標高 455メートル)を中心として東北東~南東~南南西にかけてが壮瞥町、それ以外が洞爺湖町になっている。なお、中島には1960年(昭和35年)頃に2世帯6人の定住者がいたが[7]、現在は定住者はいない。
名称の由来
編集アイヌ語の「トヤ(to-ya)」(湖・岸)に由来する普通名詞である[8]。本来は湖の北岸を指す地名であったが、和人によって洞爺と当て字され、湖の名となった。現在では湖の北岸である本来のトヤは、「向洞爺」と呼ばれている[9]。アイヌの人々は単に「ト(to)」(湖)と呼んでいたと考えられる[8]。
洞爺カルデラ
編集約10.6 - 10.9万年前[10]に洞爺火砕流をともなう噴火が起こり[11][12]、「洞爺カルデラ」が形成された。このときに放出された火山噴出物の総体積は230 - 310立方キロメートル(100 - 140立方キロメートル DRE)[14]のVEI-7で、カルデラの周囲には厚さ数十メートルの火砕流台地が形成されている[15]。この大規模な噴火による火山灰は北海道から東北にかけての広い範囲の地層に見られる。
湖の中央に浮かぶ4つの島を総称して「中島」と呼ぶ[16]。これは約5万年前の火山噴火にともなって形成された溶岩ドームと火砕丘の集まりであり[16]、湖底を含めると11の火山体が確認されている[16]。2万年ほど前から洞爺湖の南岸で噴火が繰り返され、有珠山が誕生した[11]。
変遷
編集湖水水質
編集元々は極貧栄養湖で透明度は高かったが、閉山した鉱山廃水や洞爺湖温泉街をはじめとした排水の流入が増えていったため透明度の低下が著しい。
1920年に電源開発を目的に流出河川に建設された壮瞥発電所と、長流川の川水を利用した洞爺発電所、さらに従来流入していなかった長流川上流部に建設された久保内ダムなどにより、長流川の川水が流入することになった。長流川上流には1907年頃より相次いで操業していた幌別硫黄鉱山、徳舜瞥鉱山、弁景鉱山があり、1939年から1973年の閉山までpH2ほどの鉱山廃水が洞爺湖に流入し続けた。湖水は1970年にpH5まで酸性化し続けた結果、多くの生物が死滅した[17]。
これに伴い、1973年から長流川上流の鉱山廃水の中和事業が本格的に行われた[18]。また、1977年(昭和52年)の有珠山の噴火によって大量の火山灰が洞爺湖へ降り注いだことから、アルカリ性の火山灰によって酸性の湖水が中和され、1995年にはpH7前後まで回復した。ただし、中和事業による作用と火山灰による作用のどちらが勝ったのかは不明である。
漁業
編集在来種はアメマス、ウグイ、ヨシノボリ、ハナカジカ等で、現在までにワカサギ、ヒメマス、ニジマス、サクラマス、コイ、ブラウントラウト等が漁業および遊漁を目的として人為放流されている。1970年代を中心に湖水が酸性化した影響で生息数と魚種の減少がみられたが、現在では酸性化の影響は残っていない。
ヒメマスは阿寒湖から1893年に最初の放流(卵)が行われ、1908年には支笏湖から放流された。漁獲量は1930年頃には年間25トンあり、最も漁獲量が多かったのは1950年代で100トン程の漁獲があったが、鉱山廃水による湖水の酸性化により漁獲量は急激に減少した。その後、水質の回復を受けて1986年には50トンまで漁獲量が回復した[19]。ワカサギは1912年に霞ヶ浦から移植された。ニジマスは1926年に、サクラマスは1928年に千歳孵化場から移植された。
流出河川の壮瞥川ではアイヌがのぼり簗漁でシロザケを漁獲していた記録に残っているが、湖産の魚類を捕獲していたかは不明である[17]。
中島のエゾシカ
編集1957年から1966年にかけて、オス1頭、メス2頭の3頭のエゾシカが観光資源として人為的に島に導入された[20]。その後、エゾシカの個体数は急激な増加と減少を繰り返しており、ピーク時には400頭を超え[20]、その採食圧によって中島の植生に大きな影響を与えていることが指摘されている[20]。
北海道洞爺湖サミット
編集2008年(平成20年)7月7日 - 7月9日の日程で「第34回主要国首脳会議」(北海道洞爺湖サミット)がザ・ウィンザーホテル洞爺リゾート&スパを会場に開催された[21]。
洞爺湖有珠山ジオパーク
編集洞爺湖有珠山周辺地域が、地質学的に貴重な遺産を保護しながら地域の教育や科学振興及び観光事業に活用し、持続可能な方法で地域活性化を図ることが可能な地域であるとして、国際連合教育科学文化機関(UNESCO)の支援により設立された世界ジオパークネットワーク(GGN)への加盟申請が行われ、2009年(平成21年)8月22日に認められ洞爺湖有珠山ジオパークが「世界ジオパーク」に認定された(前年には「日本ジオパーク」に認定されている)。
周辺
編集参考画像
編集-
洞爺湖と中島(2013年9月)
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ポロモイ山から望む中島(2009年5月)
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湖面が凪いでいる洞爺湖(2007年8月)
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冬の洞爺湖
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洞爺湖温泉付近からの眺望(2008年9月)
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湖の北岸にある浮見堂公園(2006年6月)
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洞爺湖と中島(2014年8月)
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洞爺湖の大島(中島)に所在するモニュメント(2022年6月)
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博物館前桟橋(2022年6月)
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中島・湖の森博物館(2022年6月)
洞爺湖が舞台(ロケ地)となった作品
編集- 映画
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- 『リメインズ 美しき勇者たち』(1990年)
- 『ギララの逆襲/洞爺湖サミット危機一発』(2008年)
- 『しあわせのパン』(2012年)
- テレビドラマ
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- 『ゆうひが丘の総理大臣』(1979年)
- 『スチュワーデス刑事』(2003年)
- 『温泉(秘)大作戦』(2013年)[22]
- テレビアニメ
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- 『天体のメソッド』(2014年)- 作中で舞台となる「霧弥湖町」は洞爺湖温泉周辺がモデルとされており、実際には「洞爺湖」とされている施設名などが「霧弥湖」とされている以外は、道南バス洞爺湖温泉ターミナル他の施設や街並みがほぼそのまま登場している[23][24][25]。
- テレビ番組
- 漫画
- ゲームソフト
ほか
脚注
編集- ^ “平成26年全国都道府県市区町村別面積調 湖沼面積” (PDF). 国土地理院 (2015年3月6日). 2015年3月7日閲覧。
- ^ “支笏洞爺国立公園”. 環境省. 2014年8月9日閲覧。
- ^ “日本ジオパークネットワーク”. 2014年8月1日閲覧。
- ^ “日本八景(昭和2年)の選定内容” (PDF). 環境省. 2014年8月1日閲覧。
- ^ “「美しい日本の歩きたくなるみち」500選 全コース一覧”. 日本ウォーキング協会. 2015年4月15日閲覧。
- ^ “volcano”. 産業技術総合研究所 地質調査総合センター. 2014年8月1日閲覧。
- ^ 出典:角川日本地名大辞典による
- ^ a b “アイヌ語地名リスト ツキサ~トヨコ P81-90P”. アイヌ語地名リスト. 北海道 環境生活部 アイヌ政策推進室 (2007年). 2017年11月24日閲覧。
- ^ 出典:山田秀三『北海道のアイヌ語地名十二話』、『アイヌ語地名の研究 山田秀三著作集』第1巻42頁所収、草風館、1982年。
- ^ 東宮 昭彦、宮城 磯治「洞爺噴火の年代値」『火山』第65巻第1号、2020年、13-18頁、doi:10.18940/kazan.65.1_13、2020年4月5日閲覧。
- ^ a b “ジオパーク イントロダクション”. 洞爺湖有珠山ジオパーク. 2012年11月9日閲覧。
- ^ 約10万年前と記述される場合も見受けられる。
- ^ 宝田 晋治「阿蘇 4・姶良・洞爺噴火の火砕流・降下テフラの分布と 噴出量推定」『国際火山噴火史情報研究集会講演要旨集』2019年、1-7頁、2020年4月5日閲覧。
- ^ 火砕流:80~160km3 (38~77km3 DRE),降下テフラ:150km3 (60km3 DRE)[13]
- ^ “有珠火山における過去の噴火の推移の例”. 産業技術総合研究所 地質調査総合センター (2008年1月23日). 2014年8月9日閲覧。
- ^ a b c “約5万年前 中島の形成”. 洞爺湖有珠山ジオパーク. 2012年11月9日閲覧。
- ^ a b “湖沼・河川における増殖事例” (PDF). 日本水産資源保護協会. 2014年8月9日閲覧。
- ^ 吉田哲也、五十嵐敏文、朝倉國臣、宮前博子、彌富 信義、橋本 晃一 (2004年). “酸化マグネシウムによる坑廃水中和処理殿物のフェライト化に関する研究”. 資源と素材 Vol.120. pp. 577-583. doi:10.2473/shigentosozai.120.577. 2014年8月9日閲覧。
- ^ “洞爺湖におけるヒメマスの年齢と成長”. 北海道さけ・ますふ化場研究報告. 水産総合研究センター北海道区水産研究所 (1996年). 2014年8月9日閲覧。
- ^ a b c 助野実樹郎, 宮木雅美「エゾシカの増加が洞爺湖中島の維管束植物相に与えた影響」『野生生物保護』第11巻第1号、「野生生物と社会」学会、2007年、43-66頁、doi:10.20798/wildlifeconsjp.11.1_43、NAID 110006533434、2020年11月14日閲覧。
- ^ “北海道洞爺湖サミット”. 外務省. 2014年8月1日閲覧。
- ^ “「温泉(秘)大作戦(12)」北海道洞爺湖に渦巻く美人三姉妹の陰謀!?花嫁殺人に秘められた愛と憎しみの25年!”. 土曜ワイド劇場. テレビ朝日. 2014年8月9日閲覧。
- ^ (社)洞爺湖温泉観光協会が「取材協力」としてクレジットされている。
- ^ “『天体のメソッド』制作発表会レポート(洞爺湖文化センター・実施)”. TVアニメ「天体のメソッド」公式サイト. 2015年1月25日閲覧。
- ^ アニメ「天体のメソッド」公式:Twitter(@sora_no_method)「洞爺湖観光協会様のご厚意により、本日より洞爺湖観光情報センター2Fにて当作品の資料を展示させていただいております。」(11:24 - 2014年10月6日掲載)。2015年1月25日閲覧。
- ^ 洞爺湖 - Wild Hokkaido!公式ホームページ、2017年11月4日閲覧
- ^ 「#89 洞爺湖」のブラブラ足跡マップを更新しました - ブラタモリ公式ホームページ、2017年11月4日閲覧
- ^ “「洞爺湖」刻んだ木刀、洞爺湖温泉の土産物店で人気”. 室蘭民報 (室蘭民報社). (2007年7月27日) 2012年11月9日閲覧。
- ^ “DS湯けむりサスペンスシリーズ フリーライター 橘 真希 「洞爺湖・七つの湯・奥湯の郷」取材手帳”. 任天堂. 2014年8月10日閲覧。
関連項目
編集外部リンク
編集- 支笏洞爺国立公園 洞爺湖ビジターセンター
- 洞爺湖ビジターセンター・火山科学館 (toyako.visitor) - Facebook
- 洞爺湖有珠山ジオパーク
- 洞爺湖有珠山ジオパーク (ToyaUsu) - Facebook
- 洞爺湖温泉観光協会
- 洞爺湖町観光サイト
- Lake Toya Hot spring, Hokkaido, Japan (laketoya.eng) - Facebook
- 洞爺ガイドセンター