今週のキーワード 真壁昭夫Photo:NurPhoto/gettyimages

中国は不動産バブル崩壊後、景気刺激策に6兆円もの巨費を投じているが、さほど効果が出ていない。一方で、IT大手アリババが、低価格商品専門アプリの実店舗チェーンを展開するなど、庶民の節約トレンドに合わせた新戦略で攻める企業も出てきている。ただし、値下げ競争で企業が疲弊すると、倒産が増えることも考えられる。紛れもなく中国はデフレ・スパイラルの入り口に足を突っ込んでいる。(多摩大学特別招聘教授 真壁昭夫)

「中国はデフレとの戦い」異例発言の真相は

 9月6日、中国人民銀行(中央銀行)の前総裁だった易綱氏は、「当局は、デフレとの戦いに集中すべきだ」と中国経済の現状について厳しい認識を明確にした。中国の経済官僚のトップにあった人物が、政府の経済政策に否定的な見方を示すのは異例だ。

 足元の中国のデフレ圧力の高まりは、物価などのデータや中国企業の価格戦略などから読み取ることができる。注目すべき変化は、高価格帯の商品(ブランドバッグや化粧品)などの需要は減少傾向をたどる一方、安売り商品を専門に販売する業態が人気を集めていることだ。また、価値が安定している金を買い、経済環境悪化から財産を守ろうとする人も多いという。

 不動産バブル崩壊でマンションや株価の下落リスクが高まる中、当面、中国の消費者は節約を心がけることになりそうだ。それに伴い、中国国内で値下げ競争が激化する可能性が高い。すでに、「安売り」に商機を見いだした企業が増え、一定の成果を収めている。しかし、デフレのスパイラルに陥ると、最終的には国内企業の倒産が相次ぐ深刻な事態を引き起こしかねない。